ここまでわかった市原の遺跡2 上総国分僧寺展2
仮設的なA期伽藍

展示風景 このブースはパネルを中心とする展示で、上総国分僧寺の創建段階を解説しています。
天平13年(741年)に発布された国分寺建立の詔では、七重塔を持つ立派な伽藍の造営が命じられています。造営は諸国の責任でした。
しかし国分寺の建立は、全国的になかなか進まなかったようです。
上総国分寺では、掘立柱建物による比較的簡単な伽藍で間に合わせたことが分かりました。
これを仮設的な段階として、A期と呼んでいます。
A期の上総国分僧寺が瓦を用いた形跡は、現時点で確認されていません。ただし中心建物1棟が基壇を持ち、正面に8枚の幡を掲げるなど、それなりに立派な外観ではあったようです。
A期の建物は、軸向きが東に傾く特徴があります。
造営は、まず西側の谷ラインから寺院地外郭溝を設定し、その傾きにそろうよう建物を縄打ちしたのでよう。
A期には南大門がなく、伽藍地を区画しようとする意識は、まだありませんでした。

上総国分僧寺の時期設定について
古代の上総国分寺は、これまでA期・B期の二段階に分けて理解されてきました。
最初に建てられた仮設的な伽藍をA期とし、その後に建てられた本格的な伽藍をB期とすることで、国分寺の造営計画の変更が明確に理解されています。
しかし国分寺の歴史は奈良時代から現代まで続くため、B期伽藍の落成以後を見据えた、新たな段階の設定が必要になりました。
そこで、発掘調査報告書では、寺院地に広がる付属施設群の流れにより、1から16期まで16段階の区分を行っています。
ここでいう1期が、A期伽藍期に相当します。
A期の附属施設
A期伽藍の付属施設は、中心建物を取り巻く西辺・北辺・東南部に造られました。それぞれが3棟の大型掘立柱建物を中心に、ブロックを構成しています。
最も格式高いのが西ブロックで、四面廂を付けた建物が2棟見られます。
廂付きの附属施設は、上総国分尼寺・上野・下野・常陸・遠江国分寺にも例があり、注目されます。
それぞれ西ブロックが造仏所、北ブロックが僧坊、東南ブロックが造寺施設に推定されています。
また、A期伽藍期が造営された頃、寺院地の北方から中心建物に向け、側溝持ちの道路が建造されています。
この道は、遺跡のはるか北方に位置する加茂遺跡D地点でも発見されており、国分寺に資材を搬入するために造られた建設道路と考えられます。

A期伽藍推定図
A期の中心建物は基壇に乗っていたと思われることから、瓦を葺いていた可能性もあります。
しかし該当する瓦が確認されていないため、現時点では瓦葺きではなかったと考えるのが妥当でしょう。
なお、上図には描いていませんが、この段階の重要施設として、「東南ブロック」が画面右方向に展開していました。
A期の遺構

国分僧寺の建設道路跡
国分寺造営の事業規模を物語る例として、建設資材の運搬道路の発見がある。
この道は両側溝間が3メートルあり、遺跡のはるか北方から主要伽藍建予定地まで引かれていた。
A期伽藍の頃に造られ、本格的なB期伽藍の工事のために使われたのだろう。
B期伽藍の落成とともに廃されている。

A期の附属施設(東南ブロック)
大小3棟の南北棟掘立柱建物がセットとなる。
写真には写っていないが、3棟の東方の寺院地外郭溝には土橋の痕跡が発見されており、このエリアへの連絡路と考えられる。
この3棟は、後に北辺部に移築され、B期伽藍の造営施設として使われたようだ。
従ってA期の当初から、同様の機能を担っていたと考えてよいだろう。

幡竿の跡
写真は幡竿があった部分の土層断面を写したもの。
幡竿は長方形の堀込みに斜めに固定され、周囲を層状に突き堅め、版築している。
竿の太さは竿底で50センチメートルを越える。まるで電柱のような印象だ。
幡を掲揚した姿は、さぞかし豪勢だったろう。
A期の遺物

永田・不入窯で生産された須恵器
永田・不入窯跡は、市内南部に位地する須恵器の窯跡群で、8世紀中葉から9世紀初頭頃まで操業していた。
上総国分僧寺跡から見いだせる同窯の製品は、窯編年のII期以降で、生産体制もその段階から本格化していることから、国分寺の小型須恵器の需要を支えていたことが分かる。
写真の資料は、上総国分僧寺跡から出土した、永田・不入窯2期の製品。
国分寺のA期か、それに近い段階に搬入されたものと思われる。

朱墨硯に転用された須恵器
朱墨硯として再利用された破片も混じっていた。器面に赤く見えるのが朱墨の跡。
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更新日:2022年04月18日