005姉崎妙経寺貝塚の貝層断面の剥ぎ取り

更新日:2022年04月18日

忍澤成視

貝層の一部を剥がし取る作業を行う様子の写真

写真 妙経寺貝塚の貝層断面

 姉崎妙経寺貝塚(みょうきょうじかいづか)は、市内では珍しい海岸付近の低地に立地する貝塚です。貝層中からは、土器や石器のほか、魚や動物の骨も多くみつかり、貝層の堆積も最大1.2メートルと極めて良好な状態でした。そこでこの状態を部分的に保存する目的で、特殊薬品を使った「接状剥離せつじょうはくり」という方法で貝層の一部を剥がし取る作業をおこないました。

<1>貝層断面の清掃

 剥がし取る貝層断面を写真・図面などで記録したあと、断面がなるべく平らになるように清掃します。

貝層断面を平らになるように清掃する様子の写真
貝層断面を清掃した後の様子の写真

<2>薬剤を塗る

 貝層断面に、特殊な薬剤を塗り、貝層表面や内部にしみこませる。

複数の作業者が貝層断面に薬剤を塗っている様子の写真

<3> 水をかける

<2>の薬剤は、水と反応すると接着力があらわれるので、薬剤塗布後にまんべんなく水をかける。

薬剤を塗った貝層断面に水をかけている写真

<4> 布を貼り付ける

 貝層断面を接着させる布を貼り付けていきます。布の上からもさらに薬剤と水をかけ、 しっかりと布に貼り付くよう貝層断面の凹凸も手を使ってなじませていきます。

複数名の作業員が貝層断面を接着させるための布を貝層断面に貼り付けている写真
複数名の作業員が貝層断面の近くで作業をする様子の写真
複数名の作業員が貝層断面の近くで作業をする様子の写真

<5> 貝層を剥がし取る

 1日ほど放置しておくと、薬剤は完全に固まります。接着具合を確認しながら、貝層の上部から剥がしていきます。

薬剤で固まった貝層を剥がす作業を行なっている写真

 この貝塚は砂堆上に形成されたもので、貝層の基盤は砂です。砂は土よりもはるかに重いため、剥ぎ取られた貝層の重量は私たちの想像をはるかに超えるほどのものでした。貝層下部の砂層から貝層上部の現地表面までおよそ2メートル、長さ8メートルの貝層の剥ぎ取りは、数名の職員と大勢の調査補助員の協力で斜面下からやっとの思いで引きずりあげて終了しました。

剥ぎ取った貝層の写真

写真 完成状態

<6> パネルに貼り付ける

 剥ぎ取った貝層断面は、さらに特殊な薬品を使って木製のパネルに貼り付けました。写真右端にあるスケールは高さ2メートルを示しています。発掘現場では、狭い溝(トレンチ)の中でしか見られなかった貝層の全貌を一目で見ることができます。貝層の厚さと見事な堆積のしかたに圧倒されます。

展示

 貝層の剥ぎ取りの目的は、貝塚の一部をできるだけそのままのかたちで保存することと、より臨場感のある展示物として活用することにあります。妙経寺貝塚の剥ぎ取りは、平成17年夏に開催された山梨県の博物館の特別展で初めて披露され、実物資料、そして原寸大の存在感によって見学者を驚嘆させました。
 その後、この剥ぎ取りは、文化財センター内の通路壁面に常設展示されています。

貝層の画像はこちら(右クリックで「保存」を選択)

それぞれ50・25・10dpiで実寸(約8×2メートル)になります。

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