ノート023磨製石斧と鉄斧の切れ味【考古】
研究ノート
近藤 敏
石斧(いしおの)は、木製の柄が取り付けられて初めて、木を伐る斧としての仕事が可能になります。最近の研究では実験考古学として、出土した石斧や柄を制作復元して、さらに実際に木材を得るための立木伐採実験を行っています。

復元した磨製石斧(横斧)を使った伐採実験

磨製石斧で切り倒されたスギ

磨製石斧による伐木の切断面
上の写真は、2006年6月10日に東北大学川渡農場で実施した磨製石斧による伐採実験のようすですが、これらの実験考古学的な研究成果によって、硬くて伐れないと考えられていたクリは、生木では伐採が容易であり、加工も非常にし易い木材である事がわかりました。
また、逆に柔らかくて伐り難いとされたスギ材も、石斧でよく伐れることも判明しました。

鉄斧(中型ヨキ)による伐木の切断面

鉄斧を使った伐採実験結果
磨製石斧と鉄斧による木の切断面を比較すると、石斧の切断面はややササクレだっていますが、鉄斧では比較的ササクレが少ないことかわかります。
しかし、想像以上に石斧の切れ味が良いことには驚かされます。
当センターの展示室では、実際に柄に装着した磨製石斧を使って伐採したスギの丸太片を展示していますので、切断面を観察することができます。

磨製石斧で伐採したスギ材の展示
参考文献
近藤 敏 2006年 「報告―第24回日本植生史学会談話会」 『植生史研究第14巻2号』日本植生史学会
Robert L.Carneiro 1979 「1/Tree Felling with the Stone Ax: An Experiment Carried Out Among the Yanomamo Indians of Southern Venezuela」
『Ethno-archaeology』Carol Kramer,Editor
コリン・レンフルー 他著・松本建速 他訳2007年「第II部人類の様々な体験を発見する サマーセット・レヴェレズの木材加工」考古学 東洋書林
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更新日:2022年04月18日